2025年03月20日

北海道歴天日誌 その259(1922年8月1日)北海道に市が誕生!6市の市制施行

1922年(大正11年)8月1日(火曜日)
この日は、北海道の歴史上、ひとつの区切りとなる日である。

この日まで北海道は、本州や四国、九州の「内地」とは異なる半殖民地的な立場であり、同様の市町村制度は導入されておらず、国が独自に制定した「北海道区制」が布かれていた。これは、北海道に内地と同様の制度を導入するには「時期尚早」とされたからである。

1907年(明治40年)には、北海道選出の代議士が一致して、北海道に市制を施行する法律案を提出し、函館が率先して市制を敷くということで請願を行った。ところが貴族院で「時機が早い」と否決されてしまうなど、苦い思いを繰り返してきたのだ。

しかし「開道50年」を経過し、人口も全体で235万人を抱えるに至り、内地同様の市制が成り立つとの判断から、この年(1922年)に法律が改正され、市制の法律から北海道の除外規定が削除された。このため、北海道でも「市」が誕生できるようになったのである。

この日までに道内にあった区は、札幌・小樽・函館・旭川・室蘭・釧路の6つ。
これらの区はすべて、8月1日に市制を施行。北海道には同時に6つの市が誕生した。

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▲看板を取り替えた札幌「市」役所(1922年:大正11年8月2日付 北海タイムスより)

さて、この日の天気であるが、天気図をみると北海道付近には低気圧が複数あって、気圧の谷の中である。
全般に雲の広がりやすい天気ではあったが、天気の大きな崩れはなく、午後は日差しや晴れ間の出たところも多かった。

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▲1922年(大正11年)8月1日正午の天気図 (『天気図』大正11年8月,中央気象台,1922-8 国立国会図書館デジタルコレクションより)

6市の中では、釧路は午後は晴れて、最高気温は25.0度まで上がり、当時の釧路としては珍しい夏日。
旭川も晴れ間が多く、最高気温は29.5度まで上がって、真夏日一歩手前の厳しい暑さとなった。函館も晴れ間はあって、26.5度まで上がっている。

一方で札幌は曇り空が続き、北西の風のため最高気温もそれほど上がらず24.7度どまり。
湿度が90%前後と高く、少しムシムシとした一日であった。

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▲看板を取り替えた旭川「市」役所と市長臨時代理の村本初太郎氏(1922年:大正11年8月2日付 北海タイムスより)

さて、当の「新」市民たちは、どういう気持ちでこの日を迎えたのか。
当日の北海タイムスのコラムが代弁している。

閑是非

本日より 全道六区は市制に改められ 新装を纏ふことである

区が市になっても 女が男になったわけでも 牛が馬に変った訳でもない
やっぱり札幌は札幌 小樽は小樽に何等かわりはない

新しき皮袋に 古き酒を盛るのは余程の馬鹿者でなければならぬ

然し 道路はお話にならず 下水上水の設備はゼロ
蚊に攻られ ボウフラがうようよして 臭気粉々では 祝賀する気にもなれぬ

区長より市長になるものは 頭はプーアで 世の中に通用しない落伍者が 北海道と云ふむかしの囚徒村へ島流しの格ではチッとも有難味はない
(1922年:大正11年8月1日付 北海タイムスより)


名前だけ変わっても、暮らしの上では不満を抱え、祝賀する気にもなれぬ、と厳しいご指摘ぶりである。

とはいえ、いろいろ祝賀行事は行われている。

札幌では、8月3日に中島公園内で1200人が集まり、「市制施行祝賀会」が開催された。
札幌臨時市長代理の前田宇治郎氏が式辞を朗読、札幌では明治の区制以降の自治運用はすこぶる円満に進展してきたと胸を張った。

さらにその夜は提灯行列が行われている。

これは、大通西5丁目広場を出発して南に進み、南1条通りを西1丁目まで進んだあと、北に進んで大通を西に進み、市役所前で万歳三唱、さらに北三条通を進んで道庁の間で万歳三唱、そこから南へ進んで、また大通公園の西5丁目広場で万歳三唱というものである。

釧路でも同じく8月3日に祝賀行事を行い、市内各戸は国旗を掲揚して祝賀した。夜は官民連合で市制祝賀の提灯行列を行っている。

当時の人口は、多い順から函館15万2千、小樽11万、札幌10万7千、旭川6万4千、室蘭6万1千、釧路4万2千。
こうして6都市は「市」として同時にスタートを切り、さらに発展していくこととなるのであった。
posted by 0engosaku0 at 18:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史と天気 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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